政府は英国やドイツ、欧州連合(EU)などと科学技術の分野での協業を拡大する。
核融合や量子技術、人工知能(AI)といった先端技術は経済安全保障上も重要だ。
各国の開発競争が激化する。
共通の価値観を有する日欧の同志国が連携し、この分野に注力する中国と競う。
科学技術政策を所管する城内実経済安全保障相は26日、訪問先のベルリンでドイツのベア研究・技術・宇宙相と会談した。
科学技術に関する協力趣意書に署名した。先端技術の共同研究を見据えて、研究情報の流出を防ぐための「政策対話」の創設で合意した。

城内氏は25日、ドイツに先立ちオーストリアを訪れ、外交や経済・エネルギー政策を担当する閣僚らとも面会し意見を交わした。
日欧は特に「デュアルユース(軍民両用)」技術の協力に重きを置く。
日本は量子分野が強いデンマーク、英国、EUと相次いで協力文書を結んだ。
6月に国家戦略を改定した核融合分野は国際連携の強化を掲げ、改定後初の協力相手として英国を選んだ。

城内氏は日本経済新聞の取材に「価値や原則を共有する欧州の同志国と経済安保に関する連携を深めていく」と狙いを説明する。
「核融合や量子、宇宙などは経済安保上も重要な先端技術で、これらの分野の協力関係を強化し戦略的な外交を展開したい」と語る。
先端技術の開発へ投資を強める中国への危機感が背景にある。
英国のバランス科学・研究・イノベーション担当閣外相は中国を念頭に「非民主的な多くの国が技術を急速に進歩させ科学は地政学の問題になってきた」と懸念を示す。
EUのフォンデアライエン欧州委員長は供給網の中国依存を減らす「デリスキング(リスク軽減)」戦略を掲げた。
新たに発足したドイツのメルツ政権は日本を価値観が共有できる「緊密なパートナー」とみる。
日本はこういった動きを踏まえ同志国との先端技術に関する国際連携を進め、経済安保の強化をはかる。
国内で2026年度から5年間の科技政策の指針を示す「科学技術・イノベーション基本計画」の検討が進む。新計画も研究力を経済安保の基盤と位置づける見通しだ。
中国、科学予算を充実
中国は科学予算を年々拡大させている。民間企業に研究開発を促し技術革新のペースを高める「新型挙国体制」を唱える。
AIや宇宙、新エネルギーを重点分野に位置づける。
中国政府は2025年の予算で、科学技術費として3981億元(およそ8兆円)を計上した。前年比で10%増やした。
増加率は24年の7%を上回り、13%だった19年以来の大きさとなった。

人員拡充や研究費の増額によって、ハイテク分野の基礎研究を加速させる。
先端半導体を開発するメーカーへの補助も手厚くする。トランプ米政権との対立を背景に中国国内のサプライチェーン(供給網)の構築を後押しする狙いがある。
さらに国産のハイテクを様々な産業で実用化させ、経済全体の生産性を高める戦略を描く。
文部科学省の科学技術・学術政策研究所が物価の違いなどを考慮して比較したところ、中国の予算は地方分を含めると22年時点で26.5兆円に達した。
米国の19.1兆円(23年)を上回る水準になっている。
日経記事 2025.6.26より引用
(関連情報)
・日欧が先端技術で対中戦略、核融合・量子で協業拡大 経済安保に直結 外交・安全保障(日経2025.6.26)
END