小笠原諸島の南鳥島(東京都)周辺の日本の排他的経済水域(EEZ)で2026年1月から「レアアース(希土類)泥」を試掘する取り組みが始まる。
南鳥島周辺の海底にはどのような資源が眠り、どのような枠組みなのか。影響や課題を含めて3つのポイントで解説する。
・どんな資源が眠る?
・参加する組織や企業は?
・レアアース泥回収の課題は?
(1)どんな資源が眠る?

日本のEEZ内には、現在見つかっている全ての種類の海洋鉱物資源が存在しているとされる。
特に最東端の南鳥島の周辺海域には電池材料のコバルトやニッケルを含む「コバルトリッチクラスト」や「マンガン団塊」、様々なレアアースを含むレアアース泥があることが確認されており、資源確保の観点から注目されている。
レアアース泥には電気自動車(EV)用の高性能磁石の材料となるネオジムやジスプロシウム、原子炉制御システムに使われるガドリニウムなどが高濃度に堆積している。
これまでの内閣府の「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」の調査で、南鳥島沖のレアアース泥は放射性物質などの有害物質がほぼ含まれないとわかっている。
今後産業利用する際に、加工がしやすい利点になるとみている。
レアアースの世界の生産量は約7割を中国が占め、経済安全保障上も国内での供給確保が重視されている。
(2)参加する組織や企業は?

中心となるのはSIPで、海洋研究開発機構(JAMSTEC)の地球深部探査船「ちきゅう」を使って26年1〜2月にかけて、南鳥島沖のEEZ内で、水深約6000メートルからレアアース泥の試掘をする。
海底に設置した採鉱機では、閉鎖空間内で海水と泥をまぜて懸濁液にし「揚泥管」というパイプを通して回収する。
採鉱機の操作や作業の監視は遠隔操作無人潜水機(ROV)を使う。
27年2月には1日あたり350トンの回収能力を実証する試験を予定している。レアアース泥の回収から、レアアースの分離、精錬までの一連の過程を実証する。
13年にはJAMSTECと東京大学の加藤泰浩教授らの研究チームが高濃度のレアアース泥の発見を報告し、これまで多くの調査がされてきた。
SIPは経済安全保障上の理由から具体的な資源量を正式に公表していないが「産業的規模の開発ができる量。ある一定のサプライチェーンに貢献できる」(SIP)とみている。
SIPとは別に、東大の加藤教授らを中心とした「レアアース泥・マンガンノジュール開発推進コンソーシアム」という取り組みも進む。
レアアース泥とマンガン団塊から、レアアースを含む希少金属の回収の産業化を目指す産官学連携組織で、コンソーシアムの企業メンバーには、25年12月時点でIHIや鹿島、川崎重工業、三井金属などが名を連ねる。
日本だけでなく中国も南鳥島沖と米ハワイ沖の公海で、マンガン団塊に関わる調査を計画しているとされ、海洋鉱物資源を巡る動きは国内外で活発となっている。
(3)レアアース泥回収の課題は?
レアアース泥回収に向けた課題は採算性とされる。そもそも陸上鉱山からの回収と比べ、海底からの回収の技術的なハードルも高い。
これまでSIPは22年、茨城県沖の水深2470メートル地点の海底から、レアアースを含まない堆積物の揚泥を実施するなどしてきた実績があるが、南鳥島では水深約6000メートルの海底からの回収となり、技術自体の検証も必要だ。南鳥島は東京都心から南東約1950キロメートルに位置するため、産業化にあたってはインフラの整備も必要となる。

現時点では海底からのレアアース泥回収が産業的に採算がとれるのかどうかは分かっていない。
ただ、レアアース輸入を中国に依存するのは経済安全保障の観点からリスクがあるため、たとえ経済性が低くても国内で供給できる体制を構築しておく必要があるとの見方がある。
レアアース泥の採鉱が環境に及ぼす影響評価も課題だ。
海底熱水鉱床やコバルトリッチクラスト、マンガン団塊など、他の海洋鉱物資源も含め、商業掘削の国際ルールはまだ存在しない。
国連組織の国際海底機構(ISA)が7月の会合で、開発に関わる規則の策定を目指していたが、まとまらなかった。
(下野谷涼子)
【関連記事】
