西欧文明に流れる始原(アルケー)への夢
西欧文明はご存じのように、ギリシャ=ローマ文明とユダヤ=キリスト教文明の2つの軸を中心として形成されています。
西欧神秘主義は、その2つの焦点をひとつにつなぐような思考法であり、西欧文明のいわば地下水脈・地下茎(けい)として命脈を保ってきました。
西欧神秘主義の本流を形成する2つの流れがあります。 ひとつは、ギリシアの密教宗教からピタゴラス=プラトン=プロティヌス=マルシリオ・フィチーノとつながる系譜であり、もうひとつはキリスト教神秘主義の系譜です。
占星術・魔術・グノーシス主義・ヘルメス主義・カバラ・錬金術は、この2つの系譜の傍流として位置づけることができます。
西欧神秘主義の根底に神的世界への夢と憧れがあり、古代から中世、そして近代における宗教・思想・文学・芸術など、さまざまな分野で西欧的な花を咲かせてきました。
神的世界の夢は、始原(アルケー)への夢と言い換えれます。
始原=根源=彼方=永遠の観念が、地下水脈・地下茎として数千年におよぶ西欧文化を支えてきました。
始原(アルケー)への夢とは、簡単に言うと、人間が神と一体化しようとする試みです。
ギリシャ的神秘主義の完成した表現はプロティヌスに見られますが、彼は『エアネデス』第六巻「善なるもの一なるもの」に於いて次のように述べています。
「魂は、それが生来の持前を保っている限り、神への愛情を抱いて、神と一体になることを願うものです」(田中美知太郎訳)。
人間が、最終的に神と化して、この世的な世界から叡智的な世界へとたち帰ることが目標となります。
キリスト教神秘主義の最終的な狙いはもまた、個人としての人間がキリストという「仲保者」を介して父なる神と等しいものになることにあります。
キリストの霊を自己の内部に持つということは、そのまま人間から神への道を拓くことを意味します。
『新約聖書』は、たとえば「私を見たものは、父を見たのである」(『ヨハネによる福音書』第14章9節)というように、この種の指針に満ちています。
キリストの福音書の核心は、人間がキリストを通して、あるいは自らキリストとなることにより、父なる神に近づくという点にあります。
西欧神秘主義とフリーメーソン、そして薔薇十字団
西欧神秘主義の歴史は、西欧の歴史とともに始まります。
西欧の歴史がギリシアに始まるとすれば、西欧神秘主義の歩みもまたそこに始まります。
ギリシア時代の神秘主義は、その後の神秘主義的思考法の原型となりました。
しかし、西欧存否主義という名称で一括されるさまざまな宗教・思想がほぼでそろうのは、ローマ時代においてです。
たとえば、占星術・魔術・密儀宗教(エレウシス密儀・ディオニュソス密儀・オシリス=イシス密儀など)・ピタゴラス主義・グノーシス主義などは、すべてローマ帝国において栄えたものです。
キリスト教はもともとローマ帝国内の領域内に発生した、一種の密儀宗教です。
キリスト教が覇権を握ると、それ以外の神秘主義的な宗教・思想は異端として地下にもぐります。
しかしキリスト教そのものがきわめて神秘主義的な宗教であったために、ルネサンス時代の古代復興熱とともに地下にもぐった古代宗教・思想が再び西欧精神史の中心に復活してきても、容易に両者は融合していきました。
そのさい、さらに錬金術・カバラ(ユダヤ教神秘主義)が加わり、ルネサンス時代特有の魔術的世界観が形成されます。
この世界観を継承しながら17世紀に登場するのが、薔薇十字団です。
西欧神秘主義の文脈におけるフリーメーソンは、この薔薇十字団の後を受けて、啓蒙主義とともに18世紀に登場してきたのです。
(関連情報)
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